「 入試問題 」一覧

基本ができていないから入試問題はまだやらないという虚構

受験生にとって秋は志望校の入試問題(以下、過去問)を解き始める時期です。科目によって始める時期は変わりますが、社会の場合、中学受験ならこの9月から、高校受験なら2学期の期末テスト(2学期制なら後期中間テスト)の終わる11月前後が標準的な時期でしょう。社会科は学習していない単元の演習をすることが難しいため、一通りの新規単元の解説が終わったこの時期になります。

過去問の演習を始めると確実に起こる声としてこんなものがあります。
「まだ、基本ができていないから入試問題やってもしょうがない」
「基本を定着してから入試問題をやりたい」

といった内容です。端的な結論を言えば「いいから入試問題をやれ」になります。

入試問題を解いていて、できなくて基本がわかっていないという判断をすることは間違っていません。ただしそこで、入試問題の演習をやめて、基本問題の演習に切り替えるという判断が誤りということです。もし、基本問題の演習をしたいなら、入試問題の演習をしたうえで基本問題の演習行わなければならないです。入試というのは明確にゴール(受験日)が決まっています。最終的に到達しなければならない部分は一緒です。過去問の演習を遅らせることはゴールに到達するのが遅くなる(=点数が取れない)ということです。

そもそも、基本問題を演習しても入試問題の点数の向上には直結しません。入試問題は基本問題をただ解くだけの問題ではないからです。具体的な例を示しましょう。

 次のア~エは、奈良時代から室町時代にかけて著された書物などについて述べたものである。時期の古いものから順に記号を並べよ。(2018年東京都公立高校)
ア 元軍を防いだことに対する恩賞などについて、幕府に対する御家人の不満が高まる竹崎季長の活躍などを表したとされる「蒙古襲来絵詞」が製作された。
イ 遣唐使の派遣が停止され、我が国の風土や暮らしに合った文化が生まれる中で、清少納言により、宮中での日々などについて記した「枕草子」が著された。
ウ 寝殿造と禅宗の建築様式を折衷した金閣が建てられるなど、大陸の影響を受けて新たな文化が生まれる中で、足利義満に保護された世阿弥により、能についてまとめた「風姿花伝」が著された。
エ 律令国家の仕組みが定められ、中央集権的な体制が形成されるなかで天武天皇の子である舎人親王らにより、天皇に関する記述を中心に我が国の歴史をまとめた「日本書紀」が編纂された。

元・清少納言・金閣・日本書紀といった分かりやすいキーワードがあり、並べ替えの問題としては、かなり初歩の問題です。アは鎌倉時代、イが平安時代、ウが室町時代、エが奈良時代です。答えは「エ→イ→ア→ウ」です。

基本問題の演習というと、歴史の問題は時代ごとに分かれて。基本問題の演習をしてそれぞれ語句を覚えたとしても、それがいつの時代なのかということが分かっていないと入試問題では正解できません。

入試問題ができないから基本問題をやるという発想をするのは「間違えたり分からなかったりするのが嫌だ」という発想からです。間違えることを恐れてはいけません。大事なのは、間違えたときに「どこで間違えたのか」を解説を見て確認、追求することです。教科書に戻って内容を確認することも大切です。
入試問題は実は無限のパターンがあるわけではなく、出やすい内容というのはある程度決まっています。それを、効率よく解説するのが塾の役割ですし、自分で出やすい内容を見つける力を身につけるのが受験勉強です。

「解説をよく読め、間違えたところを教科書で確認しろ」というとめんどくさいという顔をする生徒も多いのですが、同じ問題を繰り返し間違えて志望校に不合格するほうがよっぽどめんどくさいと思うのですが、いかがでしょう。


「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」から何が入試に出題されるか?


最近、毎年のように追加されるので少しありがたみが薄れているような気がする世界文化遺産ですが、今年は「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が追加されました。
ありがたみが薄れたとはいえ、入試問題で世界遺産は重要なテーマの1つです。新しく追加された世界遺産は何かと問題で出題されるので、注目ポイントを見ておきましょう。

まず、世界遺産が新たに追加されたときに全く新しい知識を覚える必要はほとんどありません。例えば、今回追加された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」という正式名称をすべて答えさせる問題は出題されません。可能性があるのは上の部分の一部が空欄になっていてその部分を埋めさせる問題でしょう。
注意しておきたいのは下線部を引いた「天草」と「潜伏」です。まず、天草は1637年の島原・天草一揆で名前が出てきている地名です。天草は何県かを聞く問題が出そうな気がします。天草は熊本県です。
潜伏というのは、「鎖国」が行われキリスト教の信仰が禁止されるようになってからも、社会的には普通に生活しながら、信仰を続けていたキリシタンを指します。今回の世界遺産登録における最大のテーマですから、ここを聞く問題は大いにあり得るでしょう。逆に、斜体にした部分を記述させる問題もありかもしれません。

もっとも考えられる出題形式は、日本にキリスト教が伝来してからの広まり、江戸時代に入り鎖国への流れ、開国してから明治になり最終的にキリスト教信仰が解禁されるまでの流れを問う問題でしょう。

長崎県のパンフレット(http://kirishitan.jp/cms/wp-content/uploads/2018/07/brochure_Japanese_201807.pdf)の年表を参考にポイントを見ておきましょう。


1549年 キリスト教伝来
1550年 ザビエルが平戸で宣教する。
ここでは、南蛮貿易で栄えた港町・平戸がポイントですね。
1582年 天正遣欧使節が長崎から出港する。
1587年 豊臣秀吉がバテレン追放令を発布する。
織田信長と豊臣秀吉の対キリスト教政策の比較は入試の定番です。
1614年 江戸幕府がキリスト教禁教令を発布する。
1628年 「絵踏」が始まる。
1630年 寺請制度が始まる。
史料を使って出題される問題です。基本的に絵踏でも踏絵でも大丈夫ですが、最近は絵を踏ませることを「絵踏」、踏ませたものを「踏絵」と分類することが多いです。
1637年 島原・天草一揆が起きる。
天草四郎は出題されますね。世界遺産の構成要素に一揆の舞台だった原城が含まれているので、今年の入試に関しては押さえておいていいでしょう。
1639年 ポルトガル船の来航禁止
1641年 オランダ商館を平戸から長崎の出島に移す。
いわゆる「鎖国」の完成です。入試問題では、「鎖国」下の外交を聞くのが定番なので、おそらく朝鮮や琉球王国などの話に持っていくと思われます。

1854年 日米和親条約により開国。
1868年 五榜の掲示。
明治時代になり、民衆に対してこれまでと変わらない統治を行う意志を明治政府が示しました。つまり、この段階ではキリスト教は禁止されたままです。
1873年 欧米の批判でキリスト教が黙認されるようになる。
1889年 大日本帝国憲法が発布され、法律の範囲内ではあるが信教の自由が認められる。


こうやってみると、今年の長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産はいろいろ問題として作りやすいですね。世界遺産に登録された時も「これまでの日本の世界遺産の中でも最もストーリー性がある」と評されたのも分かります。受験生を指導するうえでこの辺りはきちんと教えておきたいですね。


中学入試プレイバック2018 「早稲田実業学校中等部」

正誤選択の問題はまず明らかに正解、もしくは誤りを探すことから始めます。自信を持って正解と言い切れる選択肢があればベストですが、いつもそういうわけにはいきません。
この問題ではまず外したいのはウ・オです。ウはちょっと笑っちゃいますね。遣隋使と言えば、おなじみ小野妹子ですが、初めて聞いたとき女性と思う人は多いでしょう。小学生時代の私もそうでした。オの鑑真は中国に渡った人物ではなく、中国から渡ってきた人物です。

イはなかなかいやらしいです。遣唐使の初期は朝鮮半島をわたるルート(北路)を使っていましたが、新羅との関係が悪化すると危険な東シナ海を渡るルート(南路)をつかうようになりました。ここまではいいとして、台湾を通ったかまではっきり地図で覚えている生徒は少ないでしょう。ただ、日本周辺の地図を思い浮かべると台湾までいくと大回りすぎるんですよね。実際は、奄美・琉球から唐に渡っています。

最後にエです。ぶっちゃけた話、聖徳太子蘇我馬子の関係がここまで史料からはっきり分かったら日本古代史の記述が変わります。
遣隋使の派遣と言えば607年ですが、中国の歴史書には600年に日本(倭)から使者が来たという記述があります。しかし、当時の日本は法整備が遅れており、中国から相手にされなかったようです。それが、603年冠位十二階、604年十七条の憲法といった取り組みにつながっていったと考えられています。この文は、大胆にみてきたような嘘をついた面白さがありますね。

対等外交を求めてきた倭に対して隋は快く思わなかったものの、高句麗遠征などで疲弊していた隋に事を荒立てる力がなかったというのは意外と有名な話です。難易度としてはそこそこで、偏差値70に迫る学校に合格しようと思ったらここは取っておかなくてはいけない問題でしょう。

答え:ア


中学入試プレイバック2017 「青山学院中等部」

歴史では大きな功績があったのに後の評価で報われていない人が度々います。その代表格が大久保利通でしょう。幕末、薩摩藩の中心として活動し新政府樹立に貢献、明治維新期の様々な改革を断行した政治家です。ですが、鹿児島で圧倒的な人気のある西郷隆盛と明治に入り対立したことなどから功績に比べて厳しい評価をされがちなイメージがあります。

中高入試においても、大久保利通は難しい。なぜかというと、これといった関連キーワードがないんですよね。たとえば、
坂本龍馬…薩長同盟
伊藤博文…初代内閣総理大臣
板垣退助…民撰議院設立建白書・自由党
西郷隆盛…江戸城無血開城・西南戦争
といったようにその人物を象徴するような用語が大久保利通にはないんです。版籍奉還や廃藩置県、地租改正・殖産興業と間違いなく大事業に関わっているのですが、それゆえにこれと特定しにくく、また、多くの人が関わり大久保の業績と1人に絞ることが難しいものばかりです。長州藩の木戸孝允もその傾向がありますが、「維新の三傑」と称される3人で大久保は「薩摩藩で西郷ではないほう」という授業をしてしまいがちで、申し訳ない限りです。

関東大震災後に東京市長として復興計画に関わった後藤新平は東日本大震災以降の入試問題で復興がらみで出題されることが多くなっているので、ここで取り上げてみました。

答:問1 ③・⑩ 問2 ②

お詫び:当初2017年度入試問題を誤って2018年と表記しておりました。タイトルと画像の年度を修正しています。


中学入試プレイバック2018 「慶應義塾中等部」

 以前「あてはまるものを ”全て”選びなさい」は難易度を著しく上げる 」という記事で

(誤りを選ぶ問題で)全て当てはまる場合を考慮する。これだけで、難易度はかなり上がります。まず単純な確率論では、5択問題になるので正答率は2割になります。解き方の面で考えると、最初の問題と同じように考えようとしたとき、アかエの2択に絞れたものが、オも加えた3択で考える必要がでてきます。

ということを紹介しました。
実際の入試問題での出題例の1つが上の入試問題なのですが、問題としては非常に簡単で、裁判員制度は刑事裁判で行われるので、明らかに2が誤りです。

ただ、問題のつくりが気に入らないです。この選択肢は
「裁判員制度とは、国民が裁判員として刑事裁判に参加し、裁判官と一緒に被告人の有罪・無罪や刑罰の内容を決める制度です。」
という正しい文の刑事裁判を単純に民事裁判に変えて誤った文にしています。結果、文章の構成として
「裁判員制度→民事裁判…誤り」
「民事裁判→被告人の有罪・無罪を決める…誤り」
という二重に誤りのある文章になってしまっています。これでは何の知識を確認したいかが、ぼやけてしまいます。裁判員制度は刑事裁判で行われるという知識を確認したいなら
「裁判員制度とは、国民が裁判員として民事裁判に参加し、判決内容を裁判官とともに決定します」
といった風にすれば選択肢としてすっきりします。別にこの文でも受験生は簡単に誤りだと判別することができるでしょう。
これは、あくまで問題を作る側としての発言になってしまいますが、慶應義塾にはその名にふさわしい美しい問題を作ってほしいと思います。

答:2


中学入試プレイバック2018 「フェリス女学院中学」

問題としては別に大した問題ではなく、むしろ正解しないと大きなビハインドを背負う基本問題です。

茶の生産といえば静岡県です。静岡県の牧ノ原(市の名前は牧之原市)で茶の栽培がさかんというのは基本中の基本。牧ノ原で茶の栽培が始まったのは明治時代。江戸幕府の家臣が中心となって開拓を行ったのが、そのきっかけです。

鹿児島県は温暖な気候を生かして、新茶を4月ごろに出荷することできます。また、作業の機械化が進んでおり、静岡県が16,300haで31,800tを生産しているのに対し、鹿児島県は8,020haで22,700t(ともに平成27年)を生産しており、効率化が図られていることがわかります。公益社団法人鹿児島県茶業会議所のサイトのデータを見れば分かるように、かつては数パーセントしかなかったシェアが現在では3割近くに伸びていることが分かります。近い将来、茶の絶対王者・静岡県をとらえる日が来るのかもしれません。

答:ア


中学入試プレイバック2018 「駒場東邦中学」

歴史の学習でどの程度年号を覚えるべきかというのはいくつか意見があります。実のところ、年号を答える問題は入試問題で出題されて1問です。ですので、並び替え問題を正確にするために覚えておくべきという意見もあれば、最低限覚えておいて流れで把握すればよいという意見もあります。私自身は後者です。中学入試の問題では年号そのものを問うというより、年号をヒントに答える問題のほうが主流ですね。

そんななかでも、確実に覚えておきたい年号の1つが1904年日露戦争です。1894年日清戦争→1904年日露戦争→1914年第一次世界大戦という10年おきの戦争三連発は年号を理解するうえで定番の1つといえるでしょう。

1905年といえば、日露戦争の講和条約であるポーツマス条約を調印した年です。日露戦争では多くの戦死者を出し、多額の費用がかかったという知識は基本なので、そのための専売と判断できればそれほど難しい問題ではありません。

むしろ、塩の専売が1997年まで続いていたことに驚きます。公益財団法人塩事業センターのウェブサイト「塩百科」が詳しいですが、それだけ塩の安定供給は生活のために必要だったということです。

答:日露戦争を続けるのに必要な資金を確保するため。


中学入試プレイバック2018 「豊島岡女子学園中学」

なかなかレアな問題ですが、落ち着てい考えればノロウイルスが正解だと判断できます。ノロウイルスにワクチンがあって、接種が行われていれば毎年のようにノロウイルスが流行したりはしませんからね。

これはもうなんとなくですが、女子中で医学部合格実績の高い学校として受験生に知ってほしい知識を出題した気がしますね。ちなみに、他の予防接種に関する情報は厚生労働省のサイトからみることができます。半端な知識で話すより専門のサイトを見てもらうのが一番でしょう。

今年はインフルエンザが本当に流行しています。国立感染症研究所のサイトでインフルエンザの流行状況が都道府県ごとにみることができますが、北海道を除いて真っ赤というとんでもない状況です。自校の受験生が受験のタイミングでインフルエンザにかからないかハラハラしていましたが、中学受験では大丈夫でほっとしています。

答:4


中学入試プレイバック2018 「早稲田中学」

憲法改正が現実味を帯びるようになった今、公民のホットワードの1つが立憲主義です。

国の政治権力は強大で、国民の自由をしばることができます。そこで、この政治権力から人権を守り、保障していくために、憲法によって政治権力を制限するという考えが生まれました。これを立憲主義といいます。(東京書籍「新編新しい社会公民」)

以前から、憲法は国の最高法規であり、これを反する法律や規則は効力を持たないことは学習していました。立憲主義という言葉を教科書できちんと習うようになったのは意外と最近です。憲法とは権力者を縛るものであるという考え方を改めて説明する必要性が出てきたということなのでしょう。

最高法規という言葉だけ知っていると、ついエを選んでしまいそうですね。そういうひっかけ狙いでうまく問題がつくられています。

答:イ


中学受験プレイバック2019 「星光学園中学」

まさかのビットコイン登場。仮想通貨という言葉が出題される可能性は考慮していましたが、通貨であるビットコインがでるとは。まぁ、EUの通貨が何かと問う問題が出題されることはよくあるので、ありといえばありですが。
ラ・サール中のときに「プレミアムフライデー」は数年後死語になるから難関中が出題するのはイマイチと言いましたが、「ビットコイン」は予想就かないですね。もっと、大きくなっているかもしれないし、バブルがはじけるかもしれないし、政府が介入するようになっているかもしれないし。

いま、仮想通貨を利用した投機がいたるところで話題ですが、週刊誌やワイドショーで騒がれるようになった頃は、すでにバブルになっているとよく言われます。早いうちに参入して利益を上げた賢い人は利益を確定して現金に少しずつ変えていくのがいいように思いますが。


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