「 問題のつくり方 」一覧

「あてはまるものを ”全て”選びなさい」は難易度を著しく上げる

今回も問題作成の技術的なお話です。

次のア~エのうち、政党内閣の総理大臣を経験した人物にあてはまらないものを1つ選び、記号で答えよ。(平成29年名古屋高)
ア.板垣退助 イ.原敬 ウ.加藤高明 エ.大隈重信

採点する教師先日「入試に出る歴史上の人物」で大隈重信は内閣総理大臣になり、板垣退助はなっていないというのを取りあげました。ということで、答えはアになるわけです。しかし、この知識を知っている受験生はそれほど多くないはずです。
この問題を答えるときに、まず選んではいけない答えはイの原敬ですよね。原敬は初の本格的な政党内閣を作った人物として大正時代を代表する政治家です。
中堅以上の学校であれば、1925年普通選挙法・治安維持法のときの内閣総理大臣である加藤高明も知っておきたいです。1932年の五・十五事件で犬養毅が暗殺されたことで政党政治が終わったというのが基礎知識ですから、原敬と犬養毅の間に入る加藤高明も政党内閣ということになります。
生徒が持っている知識を動員できれば、答えはアかエまで絞ることができます。模試でこの問題が出題されたときに正答率はざっと4割ぐらいかなというのが、私の予測です。

ここからが本題で、この問題が下のようになると難易度が上がります。

次のア~エのうち、政党内閣の総理大臣を経験した人物にあてはまらないものを1つ選び、記号で答えよ。全てあてはまる場合はオと答えなさい。
ア.板垣退助 イ.原敬 ウ.加藤高明 エ.大隈重信

全て当てはまる場合を考慮する。これだけで、難易度はかなり上がります。
まず単純な確率論では、5択問題になるので正答率は2割になります。解き方の面で考えると、最初の問題と同じように考えようとしたとき、アかエの2択に絞れたものが、オも加えた3択で考える必要がでてきます。正答率は3割に下がるでしょう。

さらに難易度を上げます。

次のア~エのうち、政党内閣の総理大臣を経験した人物にあてはまるものを全て選び、記号で答えよ。
ア.板垣退助 イ.原敬 ウ.加藤高明 エ.大隈重信

まず、確率でいうと正答率は6.25%まで下がります。また、「全て」選ぶ問題では消去法が全く使えなくなるので、全ての選択肢で正しい判断ができないと正解を導き出すことができません。受験者にとって負担が大きい問題です。ちなみに、中3でこの問題を模試で出題したら正答率は1~2割でしょう。

中学校の定期テストで習ったことは全て知っておくべきと学校側が考えるのか、この手のあてはまるもの全てを選ぶ問題がよく出題されます。個人的には、テストを作成していて当てはまるものを全て選ぶ問題はほとんど作りません。持っている知識を動員すればある程度答えが絞れる問題のほうが思考力を問えてよい問題と考えているからです。

テスト作成では想定より難易度が高くなりすぎることは慎まねばなりません。すべて書いてあって正解(いわゆる完答問題)は難易度が高くなるので濫用は控えるべきです。


問題の難易度を調整するテクニックの話

採点する教師模試やテストで問題を作成するときに重要なことの1つに難易度の調整があります。1つのテストで難しい問題ばかり出題してもいけませんし、その逆も同様です。テストごとに取らせたい平均点が設定されており、それに合わせて難易度を調整していきます。
難易度を上げるということは難しいことを聞くと思いがちですが、それほど単純ではありません。今回は、その調整方法の話をしたいと思います。

たとえば、こんな問題があったとします。
 推古天皇の摂政として活動した人物の名前を答えなさい。

答えは「聖徳太子」です。この問題の難易度を下げるには答えを選択肢にすればよいです。

 推古天皇の摂政として活動した人物を次のア~エから1つ選び、記号で答えなさい。
ア.聖徳太子 イ.中大兄皇子 ウ.中臣鎌足 エ.大海人皇子

答えは「ア」になります。答えを選択式にすれば、この場合最低でも正解率は25%(未記入は除く)です。同じ選択問題でも次のようにすると難易度は上がります。

 推古天皇の摂政として活動した人物を説明した内容としてあてはまるものを次のア~エから1つ選び、記号で答えなさい。

ア.能力のある役人を登用するために冠位十二階を定めた。
イ.農民に対し、生活の心構えを示す十七条憲法を定めた。
ウ.小野妹子を唐に派遣した。
エ.国ごとに国分寺を建立した。

これも、正解は「ア」ですが、冠位十二階・十七条の憲法・小野妹子は聖徳太子に関するキーワードが入っているため、他のものを選ぶ可能性があり「聖徳太子」とただ答える問題より正解率は下がります。他の方法として

 推古天皇の摂政として活動した人物が定めた役人の心構えを示したきまりをなんというか答えなさい。

「聖徳太子」というキーワードを前提にそこから派生知識を聞くというのも難易度を上げる定番です。「聖徳太子が定めた役人の心構えを示したきまりをなんというか答えなさい。」という表現よりも少しだけ正解率が下がります。

テスト作成ではあらかじめリード文を作成することが多く、そこから問題をつくっていくことが大半です。問題を作成した後、難易度の調整をするときに一から問題を作り直すことは大変なので、このような方法で微調整をすることが良くあります。


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